3Dプリンティング・インコネル
目次
インコネルは、耐熱性、耐食性、耐圧性で知られるニッケル・クロム基超合金の一群を指します。インコネルの3Dプリンティングは、航空宇宙、エネルギー、自動車などの産業において、従来の製造アプローチに比べ、設計の自由度と機械的特性を向上させます。
概要 3Dプリンティング インコネル
インコネル超合金は、鉄、ニオブ、モリブデン、その他の元素の添加によって強化されたニッケル・クロム材料です。耐熱性、耐食性、耐疲労性に優れているため、要求の厳しい用途に適しています。
粉末床溶融技術を用いた3Dプリンティングは、従来の方法と比較して、より微細な粒子と優れた強度を持つ複雑なインコネル部品を製造する新たな可能性を提供します。主な利点は以下の通りです:
- 複雑な軽量形状の製造
- 引張挙動と疲労挙動の改善
- より高い精度と設計の柔軟性
- リードタイムの短縮と少量生産
- 最適化された格子構造を作成する能力
- 異種材料を組み合わせて1つの部品にする
利点はあるものの、高品質のインコネル印刷部品を製造するためには、残留応力、気孔のリスク、後処理などの課題に対処しなければならない。
全体として、積層造形は、熱交換器、燃焼ハードウェア、航空宇宙部品、生物医学インプラント、および極限環境での耐久性を必要とするその他のニッチ分野における革新的なインコネル・アプリケーションを解き放ちます。
構成 3Dプリンティング インコネル
インコネルは、要求の厳しい熱、腐食、圧力用途向けに設計された20種類以上の析出硬化ニッケル系材料を指す幅広い超合金ブランドである。
高いニッケル含有量はオーステナイト系FCC結晶構造を形成し、固溶体強化をもたらす。クロム、鉄、ニオブ、モリブデン、アルミニウム、チタンなどの添加元素は、機械的性能を高めるための析出硬化を促進します。
典型的な組成の範囲:
エレメント | 組成(%重量) |
---|---|
ニッケル(Ni) | 50-80% |
クロム(Cr) | 10-25% |
鉄(Fe) | 0-50% |
ニオブ | 0-5% |
モリブデン (Mo) | 0-9% |
アルミニウム(Al) | 0-6% |
コバルト | 0-2% |
チタン(Ti) | 0-5% |
タングステン(W) | 0-7% |
カーボン(C) | 0-0.2% |
特定のインコネル鋼種は、ニッチな用途をターゲットとした、より厳しい合金範囲を持っています。例えば
インコネル625
- 58% Ni
- 20-23% Cr
- 8-10% Mo
- 3-4% Nb
- 0-5% Fe
インコネル718
- 50-55% Ni
- 17-21% Cr
- 4.75-5.5% Nb
- 2.8-3.3% Mo
- 0-1% Al
主要合金元素の影響:
- ニッケル - 耐食性と延性をもたらす主要元素
- クロム - Cr酸化物の形成による耐酸化性と硬度
- ニオブ - 析出強化に欠かせないカーバイドフォーマー
- モリブデン - 固溶体強化剤
- 鉄 - 固溶体硬化に寄与
- アルミニウム+チタン - ガンマプライム析出物を形成し、合金を飛躍的に強化する。
3Dプリンティング インコネル プロパティ
インコネル材料は、耐熱性、耐食性、高強度、そして標準的なステンレス鋼をはるかに上回る卓越した疲労寿命を兼ね備えています。そのため、コストが高いにもかかわらず、過酷な要求に適しています。
物理的特性
- 密度 - 7.9~8.5g/cm3の範囲
- 融点 - 1300~1450℃(正確な組成による
- 電気抵抗率 - 70~94μΩ・cmの範囲
- 熱伝導率 - 10~20W/m・Kでより弱い
- 熱膨張係数 - 13~16(μm/m)/℃前後
機械的特性
- 引張強さ - 500-1500MPa
- 降伏強度 - 240-1200 MPa
- 伸び – 10-55%
- 硬度 - ロックウェルB 80-150
- 弾性係数 - 150-210 GPa
- 破壊靭性 - 100~300MPa・m^1/2^。
パフォーマンス制限
- 最高使用温度 - 650-1100°C
- 耐酸化性 - 空気中で最高900~1100°C
- 耐水腐食性 - 幅広いメディア
- 耐硫化性 - 連続500~900
疲労強度
インコネルの大きな利点は、熱サイクルや機械的ひずみサイクルの下でも保持される卓越した疲労性能です。例えば、インコネル718は700℃近い温度で10万時間以上の驚異的な破断寿命を提供します。
積層造形法
インコネルは、レーザーまたは電子ビームがデジタルモデル断面に基づいて金属粉末の連続層を融合させる粉末床融合技術を用いて3Dプリントすることができます。これにより、減法法では不可能な複雑なインコネル形状が可能になります。
使用されている主な技術は2つ:
レーザー粉末床融合 (L-PBF)
直接金属レーザー焼結(DMLS)とも呼ばれ、高出力レーザーが粉末ベッドを走査し、部品の断面に一致する部分を選択的に溶融させ、急速凝固時に粒子を結合させる。
電子ビーム粉末床融合(E-PBF)
電子ビームが高密度のエネルギー源となり、CADモデルの形状に基づいて粉末層を融合します。造形環境は真空で、ビーム散乱の問題を排除します。
L-PBFはより利用しやすく、より高速である一方、E-PBFはアルミニウムや銅合金のような反射率の高い材料を処理するのに適している。どちらの方法でも、1つの印刷部品内で合金を混合することができます。
プロセス
インコネルAM特有の課題としては、クラックや歪みにつながる高い熱応力、形状を制限する固有残留応力、仕上げが必要なアズプリント粗さ、鋼鉄に比べ複雑なパラメータ開発、設計データの不足などがある。
目標とする機械的性能を達成するためには、スキャン戦略、温度、ビームパワー、ハッチ間隔、粉末特性、熱管理、後処理を慎重に最適化する必要がある。
3Dプリンティング インコネル 印刷用成績表
最も一般的なインコネル溶製材はインコネル625とインコネル718で、75%以上の使用量がある。
インコネル625
このニッケル-クロム-モリブデン合金は、980℃までの極端な温度下でも、卓越したろう付け性と耐食性で強度を発揮します。燃焼缶、エンジンバルブ、熱交換器、化学処理金物に使用されます。
インコネル718
航空宇宙グレードのニッケル鋼で、降伏強度は最大1,200MPaと非常に高く、650℃の長時間使用でも特性を維持することができる。その高い強度、靭性、耐疲労性により、タービンブレードやディスクのようなフライトハードウェアの金字塔となる超合金です。
インコネル800
鉄-ニッケル-クロム合金で、1150℃までの浸炭および酸化環境に対して卓越した耐性を持つ。過熱管、熱処理装置、焼成ヒーターなどに使用されます。
インコネル 686
タングステンとモリブデンの添加により粒界腐食と孔食性能を改善したインコネル625の改良材。排煙脱硫装置や原子力用蒸気発生器に使用される。
カスタムグレード
高価値用途の研究開発では、インコネルに炭化物、高エントロピー合金、その他の粒子を混合し、耐クリープ性、耐疲労性、耐摩耗性、耐食性などの特性をさらに向上させます。
3Dプリンティング インコネル 機械的性能
一般に、付加製造されたインコネルは、鋳造品や鍛造品と比較して、引張挙動や疲労挙動が改善されている。
例えば、3Dプリンティングされたインコネル718は、10%以上の延性を保ちながら、従来の加工材料に比べて30%以上高い降伏強度と引張強度を示しています。
一般的な印刷インコネル鋼種の代表的な機械的特性
合金 | 極限引張強さ (MPa) | 降伏強度 (MPa) | エロンゲーション(%) |
---|---|---|---|
インコネル625 | 860-980 | 500-690 | 40-55 |
インコネル718 | 1250-1300 | 1050-1160 | 12-25 |
インコネル800 | 450-760 | 240-550 | 30-60 |
強度の向上は、ASTMの平均粒径が50ミクロン以上であるのに対し、印刷インコネルでは5~10ミクロンまで結晶粒が微細化したことに起因する。このホールペッチ強化は、保持された金属間化合物と相まって、機械的性能の向上に寄与しています。
予想される荷重条件に合わせた方向性凝固タイプの微細構造およびテクスチャーは、性能をさらに向上させることができる。一方、不適切な印刷パラメータによる気孔やクラックなどの欠陥は、特性に悪影響を及ぼします。
3Dプリンティング インコネル アプリケーション
3Dプリンティングは、インコネルの用途を、複雑な形状、短納期、またはカスタム合金を必要とする、より性能が重要な用途に拡大する一方、材料の限界を超えない、より単純なコンポーネントのための従来のサブトラクティブ技術を補完します。
航空宇宙
アディティブに製造されたロケット推進部品、タービンブレード、燃料ノズル、燃焼ライナーは、極端な熱流束と圧力の下で、従来加工されてきた超合金よりも優れている。また、最適化された冷却チャネルと、より軽量な連結アセンブリも実現した。
石油・ガス
坑口金具、ダウンホールツール、ドリルビット、ケーシングは、他の方法では製造が困難な形状やセンサーを組み込んだ印刷方向性凝固インコネル部品による耐摩耗性と耐腐食性の強化の恩恵を受けています。
発電
熱交換器チューブ、過熱器コイル、ガスタービン高温部部品は、インコネル組成を調整し、複雑なコンフォーマルチャンネルで重要な部分を冷却することで、2~4倍の寿命を実現しています。
自動車
異種のインコネル・グレードを混合することで、エキゾースト・マニホールドの機能を統合した単一のシリンダー・ヘッドが、冷却水の流れを最適化しながら、溶融やクラックを生じることなく850℃を超える温度に耐えることができます。
新たなアプリケーション
カスタム医療用および歯科用インプラント、マイクロ流体リアクターおよびヒートシンク、電解用電極、ニッチな航空宇宙分野では、特にインコネルAMの柔軟性が活かされています。
グローバル・サプライヤーと価格
様々な受託製造業者、金属印刷業者、印刷局、パウダー・ベンダー、ソフトウェア会社、部品仕上げ業者が、印刷インコネル部品製造を世界的にサポートしています。価格は、注文量、公差要件、リードタイム、品質ニーズなどの要因によって異なります。
会社概要 | 本社所在地 |
---|---|
レニショー | 英国 |
GEアディティブ | 米国 |
3Dシステムズ | 米国 |
イーオーエス | ドイツ |
ベロ3D | 米国 |
カーペンター添加剤 | 米国 |
プロトラブズ | 米国 |
マテリアライズ | ベルギー |
ヘガネス | スウェーデン |
オベール&デュバル | フランス |
部品代の見積もり:
インコネル印刷部品は以下の範囲に及ぶ。 $50-500/立方インチ 複雑さ、消耗品の使用率、鋼やチタンのような従来の合金と比較した加工の難しさ、要求される仕上げの品質などに基づく。大量生産は、スケールメリットを著しく向上させる。
規格と仕様
既存のインコネル錬金加工標準に導かれた印刷パラメータ開発は、組成とベースラインの機械的期待値を一致させるのに役立ちます:
スタンダード | 組織 | 対象学年 |
---|---|---|
AMS 5662 | SAE | インコネル625 |
AMS 5663 | SAE | インコネル718 |
AMS 2875 | SAE | インコネル X-750 |
しかし、印刷インコネルの設計、認定、試験、認証、粉末の取り扱い、その他の考慮事項を網羅するAM固有の規格は、まだ発展途上にある:
- ASTM F3055 - 粉末床溶融法によるニッケル合金(UNS N06625)の積層造形に関する標準仕様書
- ASTM F3056 - 粉末床溶融法によるニッケル合金(UNS N07718)の積層造形に関する標準仕様書
- ASME BPVC Section IX - 溶接、ろう付け、融合の資格
- AWS D20.1 - 積層造形による金属部品の製造
これらの仕様に照らして印刷工程のばらつきを制御しながら、確立された溶製材グレードを原料として使用することで、一貫した印刷インコネル特性を保証します。
付加製造インコネルの長所と短所
メリット | デメリット |
---|---|
- 強度と耐久性の向上 | - プリンターと投入資材の高コスト |
- 格子のような複雑な内部構造 | - プリンター用封筒に基づく限定サイズ |
- 製作時間の短縮 | - 鋳造/鍛造に比べてスループットが低い |
- カスタム合金と微細構造 | - 多くの場合、かなりの後処理が必要 |
- コンフォーマル・クーリング・チャンネル | - レイヤーデポジションによる異方性特性 |
- トポロジー最適化された軽量部品 | - 残留応力と歪みのリスク |
- 単一部品への部品統合 | - 資格と認証の課題 |
- サプライチェーンの柔軟性の向上 | - いくつかの機械的特性は、溶製材と比較して低下した。 |
- リードタイムと在庫の削減 | - ルースパウダーの取り扱いに関する注意事項 |
- 減算法を超える設計の自由度 |
一般的に、プリンターの性能とアプリケーションの要件およびコストとのバランスによって、インコネル部品製造の最適なルートが決定されます。
よくあるご質問
Q: 3Dプリントしたインコネル部品の品質を向上させるためのベストプラクティスを教えてください。
A: パラメーターの最適化、粉末管理、スキャニング戦略のバリエーション、オーダーメイドの熱サイクル、HIPと熱処理、表面仕上げ、CTスキャン、包括的な機械的検証テストはすべて、運用ライフサイクル全体にわたって信頼性の高い印刷インコネルの完全性を確保するために、アディティブ・プロセスの課題を克服するのに役立ちます。
Q: レーザーと電子ビーム粉末床溶融法では、どちらの印刷法がより優れたインコネル部品を製造できますか?
A: どちらの方法でもフル密度のインコネル部品が製造できますが、レーザーの方が表面仕上げに優れており、電子ビームの方が低速ではありますが高アスペクト比のフィーチャーが可能です。また、性能はビームパワー、スポットサイズ、ラスターパス、チャンバーサイズ、精度など特定の装置の能力にも依存します。
Q: 印刷インコネルの疲労寿命は、従来から製造されている部品と比べてどうですか?
A: 高サイクル疲労条件下では、付加製造されたインコネルは一般的に鋳造合金や展伸合金を上回ります。例えば、インコネル718は鋳造よりも6~8倍長い寿命を示します。しかし、複雑な熱機械疲労の下では、欠陥が故障を制御するため、他のプロセスに比べて最適化レベルに応じて寿命が短くなったり長くなったりします。
Q: 625や718のような一般的なグレード以外のインコネル合金を3Dプリントできますか?
A: はい、研究開発では、タングステン、タンタル、コバルト、アルミニウム、炭素などの元素をインコネル・ファミリーのパラメータ内で制御して添加することにより、剛性、強度、延性、摩耗性能、高温挙動、耐食性などの特性を向上させる特殊粉末ブレンドを開発することがよくあります。
Q:インコネル製アディティブ・コンポーネントの使用は、今後どのような発展を遂げると思われますか?
A: 装置の高速化による製造コストの削減、AMとサブトラクティブ技術を1つのシステムに統合したハイブリッド製造、欠陥を最小限に抑えるための高度な工程内監視と閉ループ制御、合金オプションの拡大、より完全な設計データ、プリント・インコネルに特化した厳格な認定基準など、すべてが採用を拡大するだろう。
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